高断熱住宅は、家族の健康を守る“器”であると同時に、
その器をどう使いこなすかによって「快適さ」の質が大きく変わります。
後編では、旭化成建材 断熱事業部の濱田氏・佐野氏を迎え、
同社が立ち上げた「快適空間研究所」の活動や、“住みこなす力”という新しい視点、さらに旭化成建材の主力商品である「ネオマフォーム」について話を伺いました。
高性能な家の価値を「数字」ではなく「体験」として伝える研究、
そして、その理想を支える建材「ネオマフォーム」開発の裏側へ──。
住まいを“つくる”から、“育てる”へ。
SANKEN ARCHITECTSと旭化成建材の視点が重なり合う「未来の暮らし」を、ここから紐解いていきます。
■ 家づくりのその先にある「暮らしの研究」

「断熱材メーカーである私たちが“暮らし”を研究するようになったのはなぜか」。
そう説明していただいたのは、旭化成建材 断熱事業部の濱田氏。
同社が立ち上げた「快適空間研究所」は、単なる建材開発の延長ではなく、“住まう人”を主語に置いた研究機関として誕生しました。
「これまで私たちは数多くの工務店様とやり取りをしてきました。
しかし、家が完成したその先──実際に暮らす方々のリアルな声を聞けていないのではないか。
そこで、断熱材メーカーとして、高断熱住宅がもたらす“価値”を科学的に明らかにする。
その結果を再び工務店様にフィードバックし、より良い住まいづくりの循環をつくっていく。そんな思いからこの研究所が誕生しました。」
定量的・定性的な調査をする中で高断熱住宅での快適さに満足している声を数多く聞いてきたと濱田氏は言います。
調査では、あたたかい住まいに暮らす方々のエピソードが数多く集まりました。
「朝の弁当づくりが苦でなくなった」
「廊下や脱衣所が寒くないから、家事がスムーズに進む」
「冬でもカーディガンを羽織らずに過ごせるようになった」
こうした声の一つひとつが示しているのは、“温度”という見えない快適さが、日常のストレスを静かに減らしているということです。
暮らしの質がワンランク上がる――
その実感は、「暖かさ」という感覚の中に確かに存在しています。
■ 日本の家、7割が“温熱環境に不満”

一方で、日本の住宅全体を見ると、まだ課題は多いです。
2016〜2018年の調査では、約7割の人が夏・冬の温熱環境に満足していないと回答しています。
冬の朝、リビングの室温が「16℃以下」という家庭が6割を超えるというデータもあります。
16℃を下回る環境では、血圧変動やヒートショックといった健康リスクも高まります。
意外にも、冬の事故死は「寒冷地」よりも「温暖地」の方が多いです。
それは、温暖地ほど断熱・気密性能への意識が薄く、対策が不十分なまま冬を迎えている現実の裏返しでもあります。
■ 快適をつくる「6つの要素」

人が「快適」と感じる条件は、実は非常に多面的です。
濱田氏によれば、それは大きく6つの要素に整理できるといいます。
・気流(空気の流れ)
・表面温度(床・壁・天井など)
・活動状態(座る・動く・寝るなど)
・服装
このうち、建築側でコントロールできるのは上から4つの要素。
つまり「どれだけ建物で“外の環境”を制御できるか」が、暮らしの快適性を左右します。
■ 人の体は「季節に順応する」

興味深いのは、人の体が常に“気候に合わせて変化している”という点です。
夏と冬でエアコンの設定温度が異なるのは、体の「季節順化(きせつじゅんか)」が関係しています。
「夏が来れば暑さに、冬が来れば寒さに、少しずつ体が慣れていきます。
そのため、季節ごとに“快適な温度の範囲”が変わるのです。」
この“順応”を前提に、建築的に温度・湿度・気流・表面温度をどう整えるかが、暮らしの質を決めていきます。
■ 旭化成建材が取り扱う「ネオマフォーム」とは

ここで話題は、三建が重ねてきた“性能へのこだわり”へと移ります。
三建が重視したのは、数値的な性能だけではありません。
施工性や住宅全体への影響、そして“住まいのバランス”をどう整えるか。
「三建では断熱・気密性能に早くから注目してきました。発売直後のネオマフォームも、全国的に見てもかなり先駆けて採用しています。」
ネオマフォームは、まさにその考え方にフィットする断熱材でした。
旭化成建材によると、ネオマフォームは独自のフェノールフォーム技術によって生まれた高性能断熱材です。
発泡体の微細な独立気泡が熱を伝えにくくし、長期にわたって安定した断熱性能を発揮します。
また、難燃性に優れ、寸法安定性が高く、施工時の加工もしやすいです。
特に三建の完全外断熱工法と組み合わせることで、
住宅全体の熱損失を抑えつつ、気密性・耐久性を高い次元で両立できるといいます。
「フェノール樹脂系の断熱材はいくつかありますが、ネオマフォームはその中でも性能と施工性のバランスが非常に良いです。
屋根・壁・基礎までトータルに対応できる点も大きな特徴です。」と佐野氏。
■ “本物の等級6”と未来の住宅
住宅性能の未来を語る上で、いま業界のキーワードとなっているのが「等級6」です。
それは、単に“数値を上げる”ことではなく、家全体としての一貫した設計思想を問う概念です。
「本物の等級6とは、机上の性能値ではなく、実際の暮らしの中で性能を維持できる設計かどうか。
断熱材の選定、施工品質、換気・気密まで含めた“総合力”が問われます。」と佐野氏。
ネオマフォームは、屋根・壁・基礎といった多様な部位での展開が進み、
2050年のカーボンニュートラル社会を見据えた断熱材の一つとして、今後さらに発展が期待されています。
気候変動が進む中で、外皮の性能をどう維持・強化するか。
それがこれからの家づくりにおける最も重要なテーマだと我々も考えます。
■ 未来の豊かな暮らしに向けて
高性能住宅は、単に“エネルギーを節約する家”ではありません。
「快適で健康的に暮らすための仕組み」だと、濱田氏は語ります。
「性能の向上によって、家の中の温度差が減ります。
それが家族の健康を守り、生活リズムを穏やかに整えてくれます。
つまり、“性能”とは人の幸せの土台なんです。」
三建が目指す「家を建てる前より、建てた後のほうが楽しい」という理念と、
旭化成建材の「暮らしを科学する」という思想。
その交点にこそ、これからの家づくりのヒントがあります。
■ “家を完成させる”のは、住み手の創意工夫
濱田氏の話を聞いていて印象的だったのは、
「家は完成して終わりではない」という言葉です。
断熱や設計の工夫は、暮らしを支える“器”にすぎません。
その器をどう使いこなし、どう快適にしていくか──そこにこそ、「住みこなす力」が問われています。
“家をつくる”ことと“家で暮らす”こと。
その間にあるのは、暮らし手の知恵と工夫です。
家の性能が高まった今だからこそ、
「暮らしを設計する」という新しい視点が、家づくりの中心になっていくのかもしれません。