「2050 STANDARD HOUSE」をブランドミッションに掲げ、高性能な家づくりに取り組むSANKEN ARCHITECTS。
私たちは播磨地域を牽引すべく日々商品の開発に取り組んでいます。
中でも近年力を入れているのが、子育て世代の方々に向けた住環境の提案です。
この度、絵本未来創造機構より高井先生をお招きし、子育ての土台作りについて、三建スタッフと語り合うトークセッションを開催。
子どもの心と体の成長を支える「絵本の力」と「住まいの環境」について、興味深い対話が繰り広げられました。今回の対談では、このトークセッションを前編と後編に分けてお届けいたします。前編では、高井先生を交えた「子育ての土台作り」についての対談をご紹介します。
トークセッション スペシャルゲスト
高井 千香(絵本未来創造機構 EQ絵本講師)
2人の子育てがひと段落して絵本の力を広げるためにEQ絵本講師として活動。子供の読みものと思っていた絵本の素晴らしさに感激感銘をうけ「たくさんの方に知ってほしい!」とEQ絵本講師へ。
トークセッション 参加者
小谷宏(SANKEN ARCHITECT 住環境アドバイザー)
心の力を育む絵本との出会いと、住まいが支える子育て環境
子どもの成長に欠かせないものは何でしょうか。
学力や体力はもちろん大切ですが、それだけでは十分ではありません。
困難に出会ったときに「もう一度やってみよう」と立ち上がる力、人と関係を築く力、そして「ありのままの自分でいい」と思える自己肯定感などなど。
これらの“心の力”は、子どもが人生を歩んでいくうえで大きな支えになります。
こうした“心の力”をどう育むか――。
今回は、地域活動の中でたくさんの親子に寄り添ってきた高井先生に、絵本の魅力とその可能性について伺いました。
親子で楽しむ時間づくりと絵本選びのコツ
絵本選びに悩む親御さんもいらっしゃると思います。
それに対し、絵本選びにルールはないと高井先生はおっしゃいます。
絵本を選ぶときに大切なのは、「親子で絵本を楽しんでいるかどうか」。
もし絵本になじみがない場合は、まず最初のステップとして図書館を活用することをすすめています。
幅広い本に出会えますし、絵本が沢山増えて収納場所に困る心配はありませんね。
また意外に思われるかもしれませんが、お母さんやお父さん自身が好きな絵本を楽しそうに読むこともお子様によい影響を与えるのだそう。親が楽しそうに読んでいると、その気持ちは自然に子どもへ伝わり、親子で楽しい時間を共有することもできますね。
義務感ではなく、楽しみとしての読み聞かせが、親子の関係を温かく育んでいくのです。
たとえば五味太郎さんの『きんぎょがにげた』は、親子で一緒に「どこにいるかな?」と探しながら楽しめる絵本。とよたかずひこさんの『こちょこちょももんちゃん』は、読むだけで親子が笑顔になれるスキンシップの一冊です。鈴木まもるさんの『あなたがだいすき』は、自己肯定感を育む優しい言葉にあふれていますし、なかそねあつこさんの『うとうとすぅすぅ』は寝かしつけにもぴったり。
どれも、親子の関わりを自然に引き出してくれる名作です。
高井先生は言います。
「つい“子どものために読まなきゃ”と力が入ってしまいがちですが、子どもは親の心を敏感に感じ取ります。だからこそ、まずは親自身がリラックスして楽しむこと。その姿が、子どもにとっての安心感につながります」
絵本が育む自己肯定感
高井先生が特に強調するのは「自己肯定感」。
「実は私自身、子どものころ自己肯定感が低かったんです。だからこそ、自分の子どもには“自分は自分でいい”と感じられる力を持ってほしいと強く願っていました」
絵本は、その自己肯定感を支える力を持っています。
落ち込んだ子どもが、登場人物の失敗や立ち直る姿に自分を重ねて「自分も大丈夫!」と思えるようになっていきます。
高井先生のお子様のエピソードも語ってくれました。
「成人した息子も絵本をきっかけに前を向けた実体験もあります。絵本に救われ、自己肯定感を上げれるのは何も子供だけではありません。」
物語を通じて得るその安心感や勇気は、心をそっと支えてくれます。
さらに高井先生は、読み聞かせのちょっとした工夫にも触れます。
「子どもが“またやってみよう”と思えたときの表情は忘れられません。絵本は、親子で一緒に前を向くための大切なツールです」
「絵本をただ読むだけではなく、普段の話すスピードで読むことが、右脳を活性化させるポイントのひとつです。」
読み終わった後は「一緒に読めてうれしかったよ」「最後まで聞いてくれてありがとう」と感謝を伝えることで、子どもの自己肯定感を高めることにつながるといったアドバイスも。
絵本が育む「EQ」という力
絵本の読み聞かせは、語彙力の向上だけでなく、感情理解や共感力(EQ)の発達にもつながります。
「6歳までに脳の90%が完成する」と言われるこの時期に、物語を通じて“嬉しい・悲しい・楽しい・怖い”といった多様な感情に触れることは、子どもの感情理解や共感力、いわゆる「EQ(Emotional Intelligence)」を育む大切な時間でもあります。
高井先生もこう話します。
「絵本を通して子どもは言葉だけでなく、人の気持ちに共感する力を自然と学んでいく」
EQは学力や知識以上に、その子の人生を豊かにし、人間関係や自己肯定感にも影響を与える大切な力です。
だからこそ、毎日の読み聞かせは“教育”というより“心の土台づくり”。
親子で過ごすひとときが、未来へ続く幸せの基盤になるのです。
親子の未来を育む「絵本」と「住まい」
絵本を通じた親子の時間は、子どもの心を豊かにし、自己肯定感を育みます。
そして、その時間を支えるのが住まいの環境です。
高井先生はこう結びます。
「私たちは絵本で心を豊かに育てるというソフト面から取り組んでいますが、住宅というハード面が整うことで、より理想に近い子育て環境をつくることができます。両方の視点を持つことが非常に重要なんです」
絵本と住まい。
一見すると別の領域のように思えますが、どちらも親子の未来を支える大切なパートナー。心の栄養を与える絵本と、安心して暮らせる住まい。この両輪があってこそ、子どもの成長はより豊かに広がっていくのです。
対談を終えて
今回の前編では、絵本と住まいという一見異なるテーマから、子育ての「心」と「環境」という両輪について語っていただきました。
絵本が親子に与えてくれるのは、ただ物語の楽しさだけではなく、安心感や自己肯定感といった、子どもが生きていくうえで欠かせない心の栄養。そしてその時間を支える住まいは、空気や温度といった目に見えない要素から、家族の関係を育む空間設計まで、子どもの成長を静かに後押ししてくれます。
互いの専門分野から交わされた言葉には「子どもを真ん中にした暮らしをどう支えるか」という共通の思いが感じられました。
続く後編では、さらに一歩踏み込み、「知育を考えた住環境づくり」について具体的なポイントをご紹介していきます。
毎日の暮らしのなかで無理なく実践できる工夫をお届けしますので、ぜひご期待ください。